梨木香歩「からくりからくさ」

からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

 ひとつの家で暮らす4人の女性と1体のお人形のお話。この小説を一言で表現することが難しい。自分や人形のルーツを探る話と言えばいいのだろうか。4人のルーツが絡まりあう、唐草文様のルーツのツタ。この話が好きだとも嫌いだとも言えない。ただ、蓉子の暮らし方は(つまり彼女のお祖母さんの暮らし方)には好感が持てた。染色をする蓉子が作る色がところどころに出てくる、それも好き。日本の色のややくすんだ色味がよいなあと思う。植物染料はみんなどこか少し悲しげ、というのは彼女の亡くなったお祖母さんの言葉だけれどもその悲しさを含んだ色を大切にする蓉子は素直で優しい。
 「りかさん」を読んでから「からくりからくさ」を読んで、そしてもう一度「りかさん」を読むといいのかもしれない。