読もうと思いつつ読み進まない本が何冊かある。昨年末ようやくネットオークションで手に入れた本もそのうちの1冊。昨日、ふと思い出したのだった。そうして以前、同じひとの本を少しだけ読んだとき、印象に残った言葉も思い出した。


 わたしは、頭痛の折りふしに、発作が酷くなると、ほかの人のひたいのちょうど同じ部分をなぐりつけて、痛い目にあわせてやりたいとつよく思ったものだ。このことを忘れないこと。
 これに似た思いは、人間において、じつにしばしば起こるものだ。
 そんな状態のとき、わたしはなぐりはしなかったものの、人を傷つけるような言葉を口にするという誘惑に負けてしまったことが何度もある。重力に屈してしまったこと。最大の罪。こうして、言語の働きがそこなわれる。言語の働きは、ものとものとの関係を表現することであるというのに。
―― シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵