2006-17:ミヒャエル・エンデ「鏡のなかの鏡」

鏡のなかの鏡―迷宮

鏡のなかの鏡―迷宮

 図書館で気になったので借りた本。図書館や本屋さんをうろうろする楽しみは予定外の本に出会うというところにあると思う。
 全部で30葉からなる連作短編集。登場人物は一貫せず舞台となる場所も違う。けれども順番に読み進めていけば何かの形でそこまでのお話と繋がるものがあらわれる。
 幻想的なこの本を読んでいるうちに、うとうとと夢を見ているような気分になった。ひとつひとつの短編は話として解決しないものやあるいは数ページだけのある情景の断片になっている。眠りが浅く夢を見ている時間が長いと、ひとつの夢は脈絡無く終わりそして何らかの繋がりのある次の夢が始まる。そんなつくりになっている。目の前がきらきらとまぶしくなりモノクロ映画のようになり柔かい色になる。
 話としてはわからなくても、主題がいまひとつ飲みこめなくても、雰囲気を楽しむことのできる物語だった。しっかり物を考えて見通すことのできるひとならもっと楽しめると思う。