経験者なら恐らく理解してくれるだろう優しい言葉をかけてくれるだろう、と思うひとは多い。わたしも以前はそう思っていた。
 例えば子供を産んだことのあるひとなら出産時の苦しみを知っているだろう。それでもすんなり産んだひとと辛い思いをしたひととでは苦しみ方に随分な差がある。お産が楽だったひとに難産のひとが出産の辛さを話しても共感は得られにくいだろう。けれども出産を経験したことの無いひとはその痛みを想像して話をする。時には、経験に基づく言葉よりも推測から出る言葉のほうが思いやりがある。
 たとえ似たような状況を経験していたとしても、今のわたしにはアドバイスができない。自分がどんなことを考えていたのか忘れてしまった。