2007-20:桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

 異形の美しさを持つ娘七竈(ななかまど)と彼女をめぐる人々の物語。
 言葉が出ない。七竈が物語る言葉は古風で少し変わっているけれど、美しい。閉じた世界でひっそりと生きる彼女の言葉は凛としている。「男どもよ、わたしを勝手に消費するでない」
 物語が進み、彼女や彼女の母親に関わった人々の真実が見えるにつれ、七竈の置かれる世界の狭さに愕然とする。
 ぼんやりとした白い丸のような存在である自分を変えるために7人の男と関係を持った母親川村優奈から七竈は生まれた。その事実だけを見れば母親はただの「いんらんなものぐるい」でしかない。けれども母親にまつわる真実は悲しい。そして七竈をとりまく世界も悲しい。
 それでも七竈の選んだ道は、悲しいことばかりではないはずだと思わされた。