鈴木志保『船を建てる』(上)

船を建てる 上

船を建てる 上

 随分と前の夏、8月の1週間を病院のベッドの上で過ごしたことがあった。その時に読んでいた漫画雑誌は母親が時々買っていたもの。その中に、とても印象に残る漫画があった。白と黒のシンプルな絵。ストーリーは覚えてはいなかったけれど、タイトルと作者だけ覚えていた。それがこの漫画、鈴木志保の『船を建てる』。ふと読みたいなと思っても、気付けばAmazonでもユーズド品しかなく半ばあきらめていたところに、この復刊。知ったときには小躍りして手帳にしっかり書き込んだ。
 上巻には27話収録。どんどん読むタイプの漫画ではなくじっくりと読みたい。それで読み終わるのに10日もかかっていた。わたしが読んでいた回も入っていた。今になってわかるその物語の意味。本当に良い漫画を買ったと思う。
 アシカの煙草とコーヒーの2匹が主人公。アシカたちの静かな世界。友達のチェリーの言うことが好きだ。涙が出そうになる台詞すらある。可愛らしく哀しくほろ苦い。ひとことでは言い切れない魅力のある1話完結のシリーズ。
 あの夏、わたしが読んでいたのは「北京エアポート/哈密の南方ランシン線」。その続編(時間的には前か…)「フロリダでは桃が熟れる頃/甘粛省では杏が熟れる頃」では泣きそうになった。
 9月発売の下巻が待ち遠しい。
 こちら↓は旧版。
船を建てる 1 (ぶーけコミックス)

船を建てる 1 (ぶーけコミックス)