2007-23:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

わたしを離さないで

わたしを離さないで

 優秀な介護人、キャシー・H の回想の形で語られる物語。よくわからないまま20数ページを読んだ時点で、ふっとその先が見えた。
 キャシーの語り口は淡々として、丁寧。思い出したかのようにキーワードが現れる。読むうちにわたしの予感は確信に変わる。キーワードに出会うたび、それでも苦しくなる。キャシーそして彼女と同じ施設で育った友人達は静かに運命を受け入れる。そのせいで読むこちらはどう受け止めればいいのか半ばわからなくなっている。正義感だけではどうにもならない問題。
 トミーがキャシーに語った言葉で、以前に自分が見た夢を思い出して、軽い眩暈。