「姑獲鳥の夏」

 映画を観た方、原作を読んだ方のみご覧ください(細かいこと書くので)
 映像化不可能という謳い文句は伊達じゃない。原作と映画は別物と考えないとだめだ。
 イメージが違うなあと観る前には思っていたキャストはまあいいかなと。京極堂も木場の旦那も意外と許せた。ただ榎木津が阿部寛である必要は無いかなあ…。もっと高笑いをしながら現れたりするのかとやや期待していたのに不思議なものが見える人物としてしか登場しない。物足りない。関口は原作では語り手だからなのかイメージがいまひとつできていなくて誰がやっても違和感あったかもなあ。一番違和感があったのが中禅寺敦子かもしれない。あとは2週間前に観た「イン・ザ・プール」で出てきた松尾スズキがまたもや白衣で登場(=内藤)という点にもちょっと。公開時期の近い映画で同じ俳優が出てくるのは雰囲気が出ないような気がする。嬉しそうに屍蝋の解説をする里村とかもっと出してほしい。そして木場に「黙れ変態」と言わせる!(これは続編か) 鳥口がいたことにエンドロールで気付いたのだけれど、木場に締め上げられていた「實録犯罪」の担当者らしきひとのこと?
 長い原作を2時間の映画にすることに無理があるのか説明が足りない、描写が浅いと思う場面もしばしば。関口・内藤・梗子といった登場人物が追い詰められていく理由が映画では物足りないのね。映画で触れにくい表現もあるだろうけれども…。原作小説は京極堂の薀蓄やら何やらで読んでいるうちに「そういう気分」になってしまうのかもしれないけれども、映像でぱっと見せられてしまうとイメージが固定されてしまって気分が出ないのかもしれない。特に死体が「出てきた」シーンに無理が…。
 細かいところにはこだわりがあるのがよくわかる。古本屋のつくりはほうと思った。店と家は繋がっていると思っていたけれどもあの手のつくりもいい感じだ。仏舎利ネタとか原作ではシリーズの続編で出てくる猫目洞だとかもちゃんと出てくるよ、いいね。

 特撮を撮っていた監督だからなのかそれっぽい場面もある。姑獲鳥が飛ぶシーンとか。ただスポットライトや光の使い方が目にさわる。あれで赤が入っていたら映画館で何人か倒れると思う。

 原作を読んでから観るものだなあ、この映画は。個人的にはレディースデーに観にいっておいてよかった。1800円払うのは…。と言いつつ続編が出るのなら、特に「魍魎の匣」を映像化してくれたら絶対観に行ってしまう…。
 最後に。原作者京極夏彦も映画の中に登場すると聞いていたけれども、その役はちょっと遊びすぎだ!