2006-12:小池真理子「青山娼館」

青山娼館

青山娼館

 なんとなく、吉本ばなな「白河夜船」や村上春樹のいくつかの小説が頭に浮かぶ。ねじまき鳥のシナモンのこつこつと受話器で机を軽く叩いてお返事するところを全く関係無いのに思い出してみたり。
 文章が巧い。軽い文体ではないけれど読みやすい。
 何かを失くしたとき、大きい悲しみの後に怒りが沸くのは誰でも同じなんだろうか。わたし自身は今となってはそこまで大切なものを失くしたとは思わないけれど、でも少しだけその流れはわかるような気がする。
 娼館という舞台ゆえの苦しみもありそうなものだけれど、それがないのは主人公の奈月が仕事と割り切っているからそんなものは感じないということなのか、そういうものはいらないから描かれないだけなのかそこら辺は少し気になった。
 それにしても、絶望と再生の過程を書く物語というものは昔からあるジャンルなのかと思わなくもない。最近こういうのを読むことが多いような。