2006-35:川上弘美「ゆっくりさよならをとなえる」

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

 川上さんのエッセイ集。彼女の言葉はゆるゆるとしていて柔かく心地良い。その中に図書館の本と本屋さんの本の違いに触れている文章があった。自分がなんとなく感じていたけれど上手く言い表せなかったことがそこに言葉にされているのに目を丸くした。世の中に自分と同じようなことを考えているひとがいると、ひとりぼっちではないことにほっとする。好きな作家さんならなおさらだ。
 一番好きなのは、最後に納められた表題作のエッセイの最後の最後。

 今まで言ったさよならの中でいちばんしみじみしたさよならはどのさよならだったかを決める(決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる)。