2007-18:古川日出男『沈黙/アビシニアン』

沈黙/アビシニアン (角川文庫)

沈黙/アビシニアン (角川文庫)

 読むうちに絡め取られてゆきそうになった「沈黙」。生存のための音楽、抹殺された音楽ルコと純粋な悪意の物語。引き込まれるのは物語の枠組みのせいだけではなくて、その文体が場の空気を創る力を持っているからだと思わせられる。本当は「アビシニアン」のほうに興味を持って読み始めたけれど、思わぬところで素晴らしい物語に出会えた。わたしにとってのルコを探したくなる。生き延びるための音楽を。
 「沈黙」のインパクトが強すぎて霞んでしまった「アビシニアン」、時間を置いてまた読み直したい。