2008-01:山田正紀『ミステリ・オペラ』(早川書房)

平成元年、東京。編集者の萩原祐介はビルの屋上から投身、しばらく空中を浮遊してから墜落死した。昭和13年満州。奉納オペラ『魔笛』を撮影すべく“宿命城”へ向かう善知鳥良一ら一団は、行く先々で“探偵小説”もどきの奇怪な殺人事件に遭遇する。そして50年を隔てた時空を祐介の妻・桐子は亡き夫を求めて行き来する…執筆3年、本格推理のあらゆるガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ。

 現代と50年前を行きつ戻りつする、その時間軸の移動に眩暈を覚えて物語世界に引き込まれていく。ページ数も多く、物語の始まりの舞台は満州。なかなか入り込むことができなかったけれど、物語が進むにつれ読むのをやめられなくなった。SFや伝奇も混ざっているのかと思いきや、謎解きが進むと一気に現実世界の範囲におさまってしまう、すとんと。ああ、おもしろかった。